返事がない ただのしかばねのようだ

死んでしまうとはなさけない!

ブログでの楽曲の引用はどこまでが可能なのか

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昨日はてなブログ開発公式ブログから以下のエントリがあり話題になっています。

staff.hatenablog.com

要約すると

  • はてなダイアリーの記事に対し権利者から権利侵害をしているとクレーム。
  • 対象のブログの件数は2000件以上。
  • はてなからブログ管理者に削除依頼メール出します。
  • 削除依頼メールにフォームのURLがあるので削除の可否を教えて下さい。
  • ブログ管理者から回答ない場合、ダイアリー自体を公開停止します。

JASRACからの削除要請が来ているのだとお察します。

ちなみに、個人宛にはJASRACから以下の内容のメールが届くようですね。

http://www.jasrac.or.jp/network/copyright_notice/warning/hpwebmasters.html

あなたのホームページでは、JASRACの管理楽曲を掲載されています。
ホームページ等に音楽や歌詞を含むファイルを掲載する場合には、事前に作詞者や作曲者など著作権者の許諾を得る必要があります。JASRACの管理楽曲を掲載するには、事前にJASRACの許諾および使用料のお支払いが必要です。

著作権者に無断で音楽をアップロードした場合には、個人や非営利目的のホームページであっても、権利侵害の責任を問われることになります。自作のMIDIやご自身が演奏・制作した音源ファイルを掲載している場合も同様ですのでご注意ください。

さらに、市販のCDや放送番組等から作成されたファイルは上記に加え、レコード制作者(レコード会社)や実演家(アーティスト)、放送事業者の著作隣接権にかかる許諾を事前に受けなければ適法にアップロードすることはできません。著作隣接権者からの許諾が得られない場合は、その音源は利用できませんのでご注意ください。

********************************************************************
つきましては、適法にホームページを運営していただくために
メール受信後 5日以内にJASRAC管理楽曲をホームページから削除してください。
********************************************************************

ファイルのアップロードから削除までの利用期間分の使用料の清算及び今後の利用に関する許諾につきまして、オンラインライセンス窓口J-TAKTからご申請いただくようご案内いたします。

ちょっと話がずれますが、上記にあるオンラインライセンス窓口J-TAKTのサイトデザインが昭和すぎて泣けるのと、SHA-1証明書でセキュリティ的にもアレなのでご利用の際にはご注意をw

利用料ってどれくらい払うの?

使用料早見表(インタラクティブ配信) JASRAC

上記JASRACのサイトによると、おそらく「2 可視的な利用(歌詞テキスト、楽譜等)」な該当するかと思います。

個人ブログの場合、「情報料なし」に該当するので、

  • 広告収入等あり:6.6円
  • 広告収入等なし:5.5円

※最低利用料月額5000円とのこと

こんなん払うのもアホらしいんで、個人ブログで載せたい場合は予めブログ単位でJASRACと契約しているブログで書くことをおすすめしたいです。はてなブログはダメよ。

 これがJASRACによるブログ運営事業者への依頼事項で、

ブログサービス等の運営事業者に対し、個人ブログ等における歌詞掲載利用を許諾することについて

下記でリストアップされてるブログやウェブサービスなら大丈夫。

利用許諾契約を締結しているUGCサービスリストの公表について

 

引用の範囲はどこまでOK?

「これ知ってる?」 著作権にまつわるギモン:ブログ(JASRAC PARK)

※著作権法上の要件を満たす場合は、歌詞の一部を引用(*)することができます。

引用の範囲ならJASRACもOKといっています。というか著作権法上OKです。

では引用ってどこまでが引用なんでしょうか?文化庁のサイトを見てみましょう。

www.bunka.go.jp

 著作権法では,一定の「例外的」な場合に著作権等を制限して,著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています(第30条〜第47条の8)。
 これは,著作物等を利用するときは,いかなる場合であっても,著作物等を利用しようとするたびごとに,著作権者等の許諾を受け,必要であれば使用料を支払わなければならないとすると,文化的所産である著作物等の公正で円滑な利用が妨げられ,かえって文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の趣旨に反することにもなりかねないためです。
 しかし,著作権者等の利益を不当に害さないように,また,著作物等の通常の利用が妨げられることのないよう,その条件は厳密に定められています。
 また,著作権が制限される場合でも,著作者人格権は制限されないことに注意を要します(第50条)。
 なお,これらの規定に基づき複製されたものを目的外に使うことは禁止されています(第49条)。また,利用に当たっては,原則として出所の明示をする必要があることに注意を要します(第48条)。

ちなみに本題である「引用」については(第32条)にかかれており、

 [1]公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。(注5)[2]国等が行政のPRのために発行した資料等は,説明の材料として新聞,雑誌等に転載することができる。ただし,転載を禁ずる旨の表示がされている場合はこの例外規定は適用されない。

とされています。よくわからないので(注5)を見てみましょう。

(注5)引用における注意事項

 他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。

  • (1)他人の著作物を引用する必然性があること。
  • (2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
  • (3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
  • (4)出所の明示がなされていること。(第48条)
    (参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)

なるほど、上記を満たしていれば「引用」と認めらるようです。

引用で著作権は制限されるけど、著作人格権は制限されないのでその辺は気をつけたうえで引用をしたほうが良いですね。

 

著作人格権って?

蛇足ですが著作人格権とは、著作者がその著作物に対して有する人格的利益の保護を目的とする権利の総称です。

ざっくり言うと、「公表権」、「氏名表示権」、「同一性保持権」のことをいいます。

  • 公表権:自分の意志で自分の作品を公表する権利
  • 氏名表示権:自分の名前を作品上に表示するかどうか、またはどんな名前で表示するかを著作者が決める権利。他人は著作者の意思に反して勝手に作品に氏名を表示したり、表示しなかったりすることはできない。
  • 「同一性保持権」:著作者の意に反して変更、切除その他の改変を禁止することができる権利。

ちなみに「著作権」は譲渡できますが、「著作人格権」は譲渡できません。

そのため会社等で行う制作物についての業務委託契約等でも「著作権」は譲渡するが、「著作人格権」は譲渡できないため、「著作人格権は行使しない」などと記載される事が良くありますね。

 

おわりに

著作権と引用について簡単にまとめてみました。おかしな点などありましたら、ご指摘いただけるとうれしいです。

また、はてなダイアリーにおいて、引用だったのか、無断転載だったのか案件毎に異なるかと思いますが、どこまでを引用の場合とみなすのかについて非常に気になります。

あと、はてなダイアリーに限らずはてなブログもこの問題はいづれ発生すると思いますのでそのリスクをはてながどう見てるのかも気になってます。

 

[追記]

id:pero_peroさんがはてなに問い合わせされたようなので追記。

pero-pero.hatenablog.com

 

[追記2]

はてなブログ公式の対応完了の記事です。 

staff.hatenablog.com

 

JASRACに告ぐ(晋遊舎ブラック新書 5)

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