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実際のところ国立大の学費はどれだけ上がっているのか?

実際のところ国立大の学費はどれだけ上がっているのか?

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毎日新聞の記事で国立大の授業料が40年で15倍になったと報じており、話題になっている。 ※年数と数字に誤りがあったため、修正をしました。最後の【追記】を参照ください。

b.hatena.ne.jp

文部科学省によると、40年前の1975年度の大学授業料は、国立は3万6000円、私立の平均は約5倍の18万2677円だった。その後、国私間の差は徐々に縮まり、14年度は国立が53万5800円、私立が86万4384円で約1・6倍になった。

記事の要約としては、
  • 40年前よりも15倍に値上がり
  • 大学生2人に1人が奨学金を借り、卒業時に数百万円の借金を背負う状況も招いている
  • 大学に行ける層と行けない層が所得で明確になる階級社会が生まれてしまう
  • 若者が選挙に行き声を上げることが重要だ
という論調である。

 

国立大の学費推移を見てみる

まずは、国立大の学費の推移を見てみる。

データについては文部科学省の国立大学と私立大学の授業料等の推移から。

記事は2014年となっているが、せっかくなんで2015年までの数字を使用。

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確かに国立大の学費は年々上がっていることがわかる。
グラフではわかりにくいが、元記事通り1975年は3万6000円となっていたが、翌年の1976年には9万6000円に値上がりしている。この値上げは記事にもある「受益者負担論」から生まれたものになる。

学費倍率の推移

さて、この時点ですでに意図的な印象操作が行われていることにお気づきだと思う。1975年と2015年とで比較すると確かに記事通りの15倍の値上げとなっているが、翌年の1976年と2015年とでの比較だとなんと5.6倍の値上げであることがわかる。

 

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 このように年々学費が上がっているため、倍率は縮まる傾向にあるが40年前の1975年時点では約15倍だが30年前の1985年に至っては2.1倍である。

消費者物価指数を確認

また、違う観点から言うと1970年と2015年では物価が違うため絶対値で比較するのはフェアではない。物価との相対的な位置づけを考慮する必要もある。例えば40年前の100円と、今現在の100円とでは価値が大きく異なるからだ。
 
データについては総務省統計局の消費者物価指数の中から、持家の帰属家賃を除く総合(1947年~最新年)を使用した。なお、基準値については2015年に補正した。

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 2015年を100とした場合、1975年は57.5となる。消費者物価指数で見ると40年の間に約3倍ほどの物価の上昇があったことがわかる。

消費者物価指数で補正した場合の学費推移

消費者物価指数で補正し、現在の物価水準なら各年の学費がいくらなのかを見てみた。

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補正後では1975年の学費は約6万5千円(補正前3万6千円)。翌年の1976年になると約16万円(補正前9万6千円)となっている事がわかった。

消費者物価指数で補正した場合の倍率推移

最後に消費者物価指数で補正した場合、2015年と各年の学費の倍率がどうなるかを見てみる。

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このように物価の変動を考慮すると、元記事と大幅に倍率が変わってくることがわかる。

消費者物価指数で補正後との倍率の比較

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物価の変動を考慮した場合、1975年と2015年とで比較すると8.2倍の値上げ、翌年の1976年と2015年とでの比較だとなんと3.4倍の値上げであることがわかる。

元記事の40年で15倍という数字がいかに印象操作であるかがお分かりかと思う。

さいごに

元記事の主張については、同意できる点もある。子供を持つ親としては非常に深刻な問題でもある。ただしセンセーショナルな見出しをつけ、若者を煽る文体はいかがなものかと思う。

こういった記事に騙されないためには、ソースの数字を探ってみる事が読む側のリテラシとして重要になってくると考えている。

またマスコミは結論ありきでなく、数字として正しく根拠を示したうえで記事を書いてほしいと切に思う。

※他にも突っ込みどころはあったが、今回は学費だけ突っ込んでみた。

 

【2016年2月11日追記】

年数にズレがあったので計算しなおしました。

結果、結論の倍率の数字に修正は入ったものの論点であった、元記事の15倍からの乖離している事実については変わらないことと、1年ずらすだけで倍率が変わるよ、印象操作だよ、という主張には変わりはありませんでした。

おわり